中学入試によく出る本  ~ノンフィクション(随筆/論説・説明文系)編~

中学入試の「国語」では、どういうレベルの読解力が求められているのか? 気になる受験生も多いと思います。

今回は、「ノンフィクション(随筆/論説・説明文系)」です。前回同様、過去に出題実績のある作品を中心に、紹介していきたいと思います。

目次

随筆文

「随筆文」で、取り上げられるテーマとしては、まずは「郷愁」があげられます。「古き良き日本」や「今は亡き人」、「失われてしまったモノ」などを追想する、といったタイプの文章です。

また、「生活感」を綴った文章も目立ちます。たとえば、「クリスマス」や「大晦日」、「夏休み」。あるいは、「旬の食材」や「一家団欒」といった、四季折々の行事や風物詩、ありがちな日常について、筆者が思いを馳せる、といったタイプの文章です。

現代の小学生(に限りませんが)には、実感しにくい世界の話かもしれません。ところが、中学入試においては、向田邦子氏や青木玉氏、玉氏の母上であらせられる幸田文氏(文豪・幸田露伴の娘さんです)といった人たちの作品は、根強い人気を保っています。

では、この手の文章を味わうにはどうしたらよいか? 難しいことですが、書物(含マンガ)や映像(含アニメ)に触れる機会を増やしたり、おじいちゃん・おばあちゃんと会話をしたり……。疑似的な経験値を積むしかなさそうです。中学受験に挑むのは小学生ですが、受験では、「おばさま・おじさま」の感性も要求されます。精神的な面での成熟度がモノをいう、ということです。とりわけ、伝統的な女子校において、その傾向は顕著です。

論説系

いっぽう、「論説文・説明文」のテーマは、多岐にわたります。

「論説系」では、文化・文明論(とりわけ、日本と海外の比較)や言語論、教育論、人生論……。「説明系」では、動・植物や天文・気象から始まり、産業や環境、歴史や地誌、言語やコミュニケーション、果てはスマホや人工知能をテーマにしたもの等々……。

論説・説明系の文章は、「きちんと」読めば、筆者の意見なり評価なりは、理解できるように書かれています。とはいえ、必ずしも小学生向けに書かれているわけではありません。ざっくり言えば、「新書」を読むレベルの力は必要です。

本を読むことが大切なのは、言うまでもありません。それと同時に、ふだんの生活の中で見聞きする、さまざまな事象に対して、どれだけ興味・関心を持っているか、という点も大切です。情報の「受信感度」を高めるためにも、ニュース等を材料に、ご家庭で、お子さまと積極的に会話をされるとよいと思います。

リビングに、一冊、地図帳を用意しておくのも効果的です。気になる国名・地名がでてきたら、場所を確かめてみましょう。一枚の地図から、思わぬ発見があるかもしれません。

中学入試でお目にかかる作品リスト

以下、「おすすめ本」を紹介していきます。入手しやすいと思われる、文庫や新書を中心にリストアップしています。なお、ほぼノンフィクション、ということで、一部、「自伝的小説」を含めました。

〇青木 玉

 小石川の家(講談社文庫)

 帰りたかった家(講談社文庫)

 上り坂下り坂(講談社文庫)

〇阿辻 哲次

 漢字再入門-楽しく学ぶために(中公新書)

 漢字のはなし(岩波ジュニア新書)

〇池内 了

 清少納言が見ていた宇宙と、わたしたちのみている宇宙は同じなのか~新しい博物学ヘの招待(青土社)

 科学の考え方学び方(岩波ジュニア新書)

 科学と人間の不協和音(角川oneテーマ21)

 時間とは何か(講談社)

 なぜ科学を学ぶのか(ちくまプリマ―新書)

〇池田 晶子

 14歳からの哲学-考えるための教科書(トランスビュー)

 14歳の君へ(毎日新聞社)、知ることより考えること(新潮社)

〇五木 寛之

 「生きるヒント」シリーズ(角川文庫)

 こころが挫けそうになった日に(新潮文庫)

 大河の一滴(幻冬舎文庫)

〇稲垣 栄洋

 ナマケモノは、なぜ怠けるのか?~生き物の個性と進化のふしぎ(ちくまプリマ―新書)

 都会の雑草 発見と楽しみ(朝日新書)

 キャベツにだって花が咲く(光文社新書)

 植物はなぜ動かないのか~弱くて強い植物の話(筑摩書房)

 身近な虫たちの華麗な生き方(ちくま文庫)

 一晩置いたカレーはなぜおいしいのか(新潮文庫)

〇今井 むつみ

 学びとは何か?~<探究人>になるために(岩波新書)

〇内田 樹

 生きづらさについて考える(毎日文庫)

 先生はえらい(ちくまプリマ―新書)

 なぜと問うのはなぜだろう(ちくまプリマ―新書)

 転換期を生きるきみたちへ~中高生に伝えておきたい大切なこと(晶文社、内田樹・編)

〇榎本 博明

 <自分らしさ>って何だろう?~自分と向き合う心理学~(ちくまプリマ―新書)

〇河合 隼雄

 こころの処方箋(新潮文庫)

 泣き虫ハァちゃん(新潮文庫)

 対話する人間(講談社プラスアルファ文庫)

〇小出 裕章

 原発のウソ(扶桑社)

〇幸田  文

 木(新潮文庫)

 雀の手帖(新潮文庫)

 季節のかたみ(講談社文庫)

〇斉藤 孝

 からだ上手 こころ上手(ちくまプリマー新書)

 読書力(岩波新書)

 余計な一言(新潮新書)

 孤独を生きる(PHP新書)

 読書する人だけがたどり着ける場所(SB新書)

〇清水 真砂子

大人になるっておもしろい?(岩波ジュニア新書)

〇田中 修

 植物はすごい-生き残りをかけたしくみと工夫(中公新書)

 植物のあっぱれな生き方-生を全うする驚異のしくみ(幻冬舎新書)

 植物はなぜ毒があるのか 草・木・花のしたたかな生存戦略(幻冬舎新書)

〇高槻 成紀

 動物を守りたい君へ(岩波ジュニア新書)

 野生動物と共存できるか(岩波ジュニア新書)

 野生動物への2つの視点-“虫の目”と“鳥の目”(ちくまプリマー新書)

〇辻 仁成

 立ち直る力(光文社新書)

 人生の十か条(中公新書ラクレ)

 そこに僕はいた(新潮文庫) ※小説のかたちをとった自伝

〇辻 信一

 弱虫でいいんだよ(ちくまプリマ―新書)

 「ゆっくり」でいいんだよ(ちくまプリマ―新書)

〇手塚 治虫

 ガラスの地球を救え(光文社・知恵の森文庫)

 ぼくのマンガ人生(岩波新書)

〇外山 滋比古

 思考の整理学(ちくま文庫)

 こうやって、考える(PHP文庫)

 ことわざの論理(ちくま学芸文庫)

 日本語の個性(中公新書)

〇中村 桂子

 科学者が人間であること(岩波新書)

 こどもの目をおとなの目に重ねて(青土社)

 核のある世界とこれからを考えるガイドブック(法律文化社)

〇日高 敏隆

 春の数えかた(新潮文庫)

 ネコはどうしてわがままか(新潮文庫)

 人間はどういう動物か(ちくま学芸文庫)

〇向田 邦子

 父の詫び状(文春文庫)

 夜中の薔薇(講談社文庫)

 眠る杯(講談社文庫)

 思い出トランプ(新潮文庫)

 男どき女どき(新潮文庫)

〇茂木 健一郎

 それでも脳はたくらむ(中公新書ラクレ)

 感動する脳(PHP研究所)

〇森本 哲郎

 日本語表と裏(新潮文庫)

 日本語根ほり葉ほり(新潮文庫)

〇山極 寿一

 人生で大事なことはみんなゴリラから教わった(家の光協会)

 ゴリラからの警告(朝日文庫)

 15歳の寺子屋-ゴリラは語る(講談社)

 「サル化」する人間社会(集英社インターナショナル)

 スマホを捨てたい子どもたち~野生に学ぶ「未知の時代」の生き方(ポプラ新書)

〇山口  真美

 自分の顔が好きですか?~「顔」の心理学(岩波ジュニア新書)

 赤ちゃんは顔を読む(角川ソフィア文庫)

〇米原 万里

 心臓に毛が生えている理由(角川文庫)

 ロシアは今日も荒れ模様(講談社文庫)

 他諺の空似~ことわざ人類学(中公文庫)

〇養老 孟司

 子どもが心配~人として大事な三つの力(PHP新書)

 ものがわかるということ(祥伝社)

 バカの壁(新潮新書)

〇リリー・フランキー

 東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン(新潮文庫) ※小説のかたちをとった自伝

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